妻が亡くなって、もう2年半余りが経った。
妻が着ていた古着が2部屋のクローゼットに収まり切れないほどある。余りたくさん収納しているので風通しも良くないだろうと思うので、思い切って大半を処分することにした。
古着専門の店とか、メルカリなどのネット販売もあることは知っているけど、どちらも売ることには違いがないので、それなりに価値が高いものなら売れると思うけど、妻のものは価値が高いものは少ないような気がする。
それと、数が膨大だから古着専門店に持ち込む場合でも手間が相当かかりそうに思う。ましてやメルカリなどは写真を撮ったりして手間をかける必要がある。
いずれにしても、今まで衣服に関しては全て妻任せで無関心だった爺さんには、選別は難しい。
妻の友人に上げることも考えてはみたが、戦後の物が不足していた時代と違って、現在はどこの家庭でも物にあふれて生活しているに違いない。人の古着など欲しい人などいるわけがない。
妻の思い出がいっぱい詰まった物を、無駄に捨てるだけでは妻に申し訳ないし、何か有効に再利用してもらえる方法がないかを探っていた。
ある時、スマホを何気なく見ていたら「古着deワクチン」という広告が目にとまった。
内容を読んでみると、古着を千葉県木更津市のNPO法人「古着deワクチンセンター」に送ると、選別し防虫・防カビ・抗菌処理をして発展途上国へ送られて再利用されるらしい。
「古着deワクチンセンター」には1日平均600袋が全国から届くらしい。
「古着deワクチン」の利用方法は、センターに申し込むと「回収キット」という大きな紙袋が送られて来る。
この「回収キット」は1個¥3300円ということになっている。
かなり高いように思うけど、この中には佐川急便の回収の送料と「世界の子どもにワクチンを・日本委員会(JCV)」を通して、ミャンマー・ラオス・ブータン・バヌアツの子どもたちのポリオワクチン5人分などが含まれているようだ。選別などをするためのスタッフの賃金なども入っているのかも知れない。
10月5日の17時ごろに、試しに1個注文してみた。AmazonPayが利用できるので、それを利用した。お蔭で名前も住所も何も書かなくてもAmazonに保存してある情報で自動入力されて完了した。
2日後に小さな段ボール箱がポストに投函されていた。開けてみると玄米袋よりやや薄手のクラフト紙の大きな紙袋と集荷方法の説明書・古着deワクチンの説明書などのパンフレットが入っていた。
パンフレットによると、衣類回収袋に入れてもいいものは
衣類:洋服・子供服・着物・ユニフォーム・作業服・スキーウェア・ベビー服・スーツは上下バラバラもOK・名前/刺繍入りもOK
タオル:新品・未使用品(ハンドタオル、バスタオル等サイズに関係なくOK)
ハンカチ:新品でなくてもOK
バッグ:ランドセル・スーツケースもOK
毛布:寝具でも毛布のみOK
靴:ブーツ・長靴・サンダル・上履き・スリッパ・和装の草履や下駄などもOK
ダメなものは
下着類全般(ブラジャー・パンツ類・靴下・タイツ・股引等)、シミ・汚れ・破損のひどいもの、使用済みのタオル類全般、ハンガー、食品、電化製品、台所用品、本、傘全般、シーツや枕、布団などの寝具
とりあえず第一便は、妻と私が最後まで着ていたスキーウェアをそれぞれ1着だけ残して、昔のスキーウェアは全部入れた。
それでも袋は半分ほど余裕が残っている。クローゼットを狭くしている厚手のものを片っ端から詰め込んで「この線まで詰めていいです」という線まで詰め込んだ。
「古着deワクチンセンター」からキット発送通知メールの2日後に佐川急便への回収依頼フォームのメールが届くことになっている。それを待って最短の2日後の10月11日午前中に回収に来てくれるように回収依頼を送信した。
時間経過は、10月5日の夕方「古着deワクチン」を注文して、7日の夕方AmazonPayの支払いが完了した旨のメールが届いた。同じ日に「古着deワクチン」からキットを発送した旨のメール。翌日に回収キットが届いた。
キット発送の2日後の9日に回収依頼フォームのメールが届いた。回収依頼フォームの最短日時は11日の午前中だったので、それを指定した。
発注から完了まで、6日間の日数と¥3300円の経費がかかるが、下着類以外なら何でもOKの手間いらずで、今流行りのSDGsになるこの取り組みは、誠にいい仕組みだと思った。
数年前、革ジャンを2着、古着店に持って行っことがあった。
「今どき、こんなもんは値段が付けられませんね!」と、断られた。
別に買ってほしいと思ったわけではなく、ゴミとして捨てるよりは有効活用できたらと思ったけど「今どきこんなもん・・・」などと言われるとちょっと「ムッ!」とした。
そんな嫌な思いもしなくていいし、1着ずつ写真を撮る必要もないので、多少お金はかかるが、古着店やメルカリなどより、よっぽどいい!!
そこで、第2段は2個注文した。
それが一昨日(10月11日)届いた。
早速、妻の洋服、シャツ類、コート類、妻が和服を二部式にハンドメイドした着物類、新品のタオルなどを詰める準備をした。
だけど、温泉旅館で貰ったタオルなどは旅館の名前や電話番号などが入っているのでダメだろうと思ったけど、ダメもとで「判断が付かない場合の電話番号」に電話して聞いてみたら、会社名や電話番号が入っているタオルでも新品ならOKです。ということだった。
妻は戦前生まれで、戦後の物のない時代を生きてきたので、何でも「もったいない精神」でため込んでいた。旅館や会社などで貰ったタオルが大きな段ボール箱にいっぱい入っていた。
このタオルの山が全部いっぺんに片付いた。
下駄箱の最上段には、もう何十年も履いたことのないハイヒールや和装の草履・下駄などが箱に入ったままの形できれいに保管してあった。これも全部OKだ。
ベルトやスカーフ、マフラーなどもOK。
亡くなる2~3年前まで着ていたもの以外は、ほとんど詰め込む準備をした。
衣類以外にタオルと履物などを詰めたら、第2弾の2つの袋も満杯になったけど、まだまだ衣類は山積みで残っている。
あと3個ぐらいは必要ではないかと思ったけど、回収キットが余っても使い道がないので、とりあえず今日追加で2個注文した。
合計で5個になった。
妻の仏前で
「お前が着なくなった衣類は、世界のどこかで着てくれる人があるらしいので、そこへ送ることにしたからな・・・」
「捨てるんではないからな。世界のどこかの人が喜んで着てくれるんだからな・・・」
「しかも、そのお金でポリオワクチン5人分になって、子どもの命が助かるらしいからな。」
「嬉しいな! ありがとう、な。」
と報告した。